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超監視社会になる

また、誰でも気づくように、ベーカムでは所得をより少なく申告することで収入を最大化できる。300万円の所得のひとはほんとうなら50万円の税金を納めなければならないが、所得を200万円に減らして申告すれば納税はなくなるし、所得ゼロなら100万円を受け取れる。このようにベーカムは、税金をごまかしたいという強い誘引を納税者に与える。

生活保護というのはある意味きわめて残酷な制度で、働く能力もなければ貯金もなく、助けてくれる家族や親戚もいないことを証明できたひとだけが受給を許される。「自分は無価値な人間だ」と認めることが生活保護の高いハードルになっていて、本来なら受給可能なひとが餓死する悲劇が起こる。ベーカムは行政による貧困認定を不要にしてこの心理的なハードルを一挙に取り去るかわりに、不正受給のモラルハザードを引き起こすのだ。

不正受給をなくしベーカムを公正に機能させるためには、いかなる国民も所得を偽ることができない超効率的な税制が必要になる。維新の会はもちろんこのことにも気づいていて、「国民総背番号制による収入と資産の完全把握」を主張している。しかし、はたしてそんなことが可能なのだろうか。

アメリカはSSN(社会保障番号)を使った国民総背番号制の国で、国民は全員が確定申告し、IRS(内国歳入庁)は世界でもっとも厳しい徴税組織とされている。いわば、維新の会が目指す税制を体現している国だ。

そんなアメリカで、1975年から『勤労税額所得控除』という、ベーカム(負の所得税)によく似た社会保障が行なわれている。これは申告所得が一定以下のひとに補助金を給付するプログラムだが、ケースワーカーとの面談を不要にして所得申告のみで還付が行なわれるため、不正受給率は給付額の20%を超えると推計されている。日本の生活保護の不正受給率が0.3%程度であることを考えれば、これがいかに異常な数値かわかるだろう。米国の税務当局は不正受給防止のさまざまな対策を講じているが、ほとんど効果がないのが現状だ。

アメリカの経験が教えてくれるのは、ひとは手軽にカネが手に入ると思えばどんなことでもするということだ。不正受給を根絶し、正直な納税者を納得させるには、アメリカの税制よりもはるかにきびしい超監視社会にするほかはない。

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素晴らしきベーカムの未来 | 橘玲 公式サイト | ページ 2 (via tamejirou)

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